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高森明勅
2018.9.3 21:33日々の出来事

皇居勤労奉仕、初日にご会釈を賜る

9月3日、遂に待望の皇居勤労奉仕の初日。
 
我々の奉仕団の他に4団体。
 
午前中は雨がち。
 
東御苑を中心に皇居内をご案内戴く。
 
残念ながら余り奉仕は出来ない。
 
僅かな時間だけ草むしり。
 
どうやら本日、天皇陛下からご会釈を賜るという。
 
にわかに緊張感が漂う。
 
昼食後、雨が上がり、曇天の下、
少し精を出して草むしりを。
 
草ぼうぼうだった場所がみるみる綺麗になって行く。
 
気持ちが良い。
 
その後、ご会釈を賜る為に移動。
 
奉仕団員が緊張してお待ちする中、陛下のご料車がご到着。
 
運転手とは別の職員が、ゆっくりと車のドアを開ける。
 
まず、皇后陛下が車からスラリと降り立たれる。
 
その瞬間から、それまでとは違う時間が流れ始めた。
 
皇后陛下は深く頭をお下げになって、
車から出てこられる天皇陛下を迎えられる。
 
更に、両陛下が室内にお入りになると、
今度は部屋全体が、それまでとは違う空間に
なったように感じられた。
 
各奉仕団ごとに立ち止まられて、優しくお言葉を賜る。
 
お言葉を賜った奉仕団の皆さんの空気が、
ふわっと和らぐのが伝わる。
 
我々は最後。
 
両陛下が前にお出ましになると、頭が自ずと下がる。
 
しかし、緊張感を上回る温かさ。
 
身体を正体不明の嬉しさが包む。
 
団長のS兄が
「我々の奉仕団では、神話を面白く分かりやすく
伝える為に、演劇にする事にチャレンジしています」
という趣旨の奉答をする。
 
それに皇后陛下から即座に
「サルタヒコなどですか」とのお答え。
 
サルタヒコは、神話を詳しく学んでいない者には、
決してメジャーなキャラクターではないだろう。
 
しかし、神話を踏み込んで知っていれば、
演劇に登場させるにはうってつけ。
 
団長は「今年の11月3日に上演予定の神話劇では私がサルタヒコを演じます」と。
 
皇后陛下「では(長い)鼻を付けて」。
 
団長「はい、鼻を付けます」。
 
神話のデティールに亘るこんなやり取りが、
奉仕団へのご下問の場でなされるとは、思いも寄らなかった。
 
最後に、天皇陛下から
「では皆さん、お身体に気を付けて」とのお言葉。
 
何人もの団員が涙を流している。
 
大袈裟ではなく、両陛下が柔らかく輝いて見える。
 
5奉仕団の全員で、天皇陛下・皇后陛下の万歳を三唱。
 
予め宮内庁の職員から、余り大きな声を出さないように、釘を刺されていた。
 
だから、少し声を落として万歳を唱えた。
 
ご料車に乗られた両陛下は車の窓をお開けになり、、
我々にお手を振られながら、去って行かれた。
 
ホーッ…。
 
何とも言えない幸福感が、空間を支配する。
 
それまでの曇り空がいつの間にか晴れていた。
 
それすら、陛下の不思議な恩恵のように
思われるほど、濃密な時間だった。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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